Web Sportivaに大の記事が載っていた。

Jリーグ走行距離ベスト5独占。新潟・加藤大が誰よりも多く走る理由

Jリーグが提供する『トラッキングデータ』は、サッカー観戦に新たな楽しみをもたらしてくれる興味深いコンテンツだ。「サッカー選手が試合中にどれだけの距離を走っているのか」という素朴な疑問に対し、たしかな数字を示して、ズバリと回答してくれる。

ヨーロッパではすでに一般的だったが、Jリーグでも昨シーズンよりこのシステムを導入した。「走り」はとりわけフィジカルな側面が求められる現代サッカーにおいて、よりクローズアップされる要素であり、選手のパフォーマンスを評価するうえでもこのデータは参考になる。
Jリーグ公式サイトで閲覧できるのは、「走行距離」と「スプリント回数」というふたつのデータで、それぞれチーム別・個人別でランキング化されている。そのうち、個人の試合別・走行距離を表したランキングがちょっとした話題となっている。上位20人が顔写真つきで掲載されるこのランキング表には、同じ顔がズラリ。つまり、ひとりの選手が上位を独占しているのだ。その選手とは、アルビレックス新潟の加藤大(かとう・まさる)、25歳――。正確なパスワークを武器とする、左利きの攻撃的MFだ。
1stステージを終えた6月25日時点でのランキング表を眺めると、1位から5位までを加藤が独占。6位に柏レイソルのMF中川寛斗が割って入るものの、7位、8位にはふたたび加藤がランクイン。以降11位、14位、15位、18位にも加藤の笑顔の写真が並んでいる。上位20傑のうち、実に11もの順位が加藤の名前で占められているのだ。

加藤がもっとも走った試合は、1stステージ第9節のヴァンフォーレ甲府戦で、なんと14.44㎞を走破。この数字がどれくらいすごいものかは、現在行なわれているユーロ2016のデータと比較してみるとわかりやすい。『UEFA.com』の6月20日の記事によると、その時点でもっとも走っていたのがイタリアのMFマルコ・パローロで、ベルギー戦で記録したその走行距離は12.57km。なんと加藤は、その記録より2km近くも上回っているのだ。
加藤は三菱養和SCユース出身で、年代別代表にも名を連ねるなど将来を嘱望されたタレントだ。2010年に新潟に加入したものの出場機会に恵まれず、2012年に愛媛FCへレンタル移籍。2014年に新潟へ復帰し、レギュラーの座を掴んだのはようやく昨シーズンのことである。
どちらかというと、若いころは技巧派の印象が強かった加藤だが、「中学時代の走り込みがスタミナの源(みなもと)」と本人が言うように、テクニシャンでありながら、かねてより運動量には自信があったという。それでも、攻守両面の仕事が求められるボランチやサイドバックならまだしも、攻撃的MFでありながら、ここまで走れる選手はやはり稀有(けう)だろう。

2ndステージの開幕戦となった7月2日の柏戦でも、加藤の走りは際立っていた。4−4−2の右MFとしてスタメン出場した加藤は、とにかくピッチのいたるところに顔を出す。ハーフウェーライン手前からドリブルで持ち上がって好機を演出すれば、逆サイドに攻撃が展開されるとボールサイドに寄って、しっかりとパスを受けられる位置に顔を出す。ショートパスを出せば、必ずワンツーで受けられるポジションを取り、時にはFWのようにダイアゴナルに走って、ディフェンスラインの背後でパスを受けようとする動きさえあった。
一方で、よりインパクトが強かったのは守備での場面。「自分の周りのセカンドボールには、常に反応するようにはしています」と本人が言うように、ピッチの上には常にこぼれ球を狙う加藤の姿があった。また、対面のFWクリスティアーノの飛び出しに対して、まるでサイドバックのような鋭いカバーリングを見せるシーンもあった。
「今日はクリスティアーノにうちのサイドバックが押されるだろうと思っていたので、そこはしっかりカバーしてあげようと考えていました」
自身の背後に位置する右サイドバックとの関係性が、加藤の運動量を増やすひとつの要因となっているのは間違いない。今季、新潟の右サイドバックを務めるのは小泉慶。本職はボランチながら汎用性が高く、サイドバックやサイドハーフでもプレー可能なユーティリティだ。

「今年は慶との関係性をすごく意識しています。お互いがカバーしあって成り立っているし、うまく信頼関係も築けていると思う。今はどんな相手が来ても、ふたりでうまく守れているという手応えはあります」
抜群の破壊力を誇るクリスティアーノに仕事をさせなかったのは、このふたりの対応力によるところが大きかった。司令塔として攻撃に絡みつつ、守備でも十分な働きをこなした加藤は、この日も両チームトップの12.951kmをマーク。加藤にすれば少ないほうだが、それでも気温30度近い暑さを考えれば、やはりこの数字は驚異だろう。
走らなければサッカーは成り立たない。とはいえ、ただ走ればいいというわけでもない。「考えて走る」とは、ひと昔前に頻繁に用いられたフレーズだが、果たして加藤は何を考えて走っているのだろうか。
「現状では守備で走ることが多いとは思うんですけど、味方を助けるための走りだったり、相手の強みを抑えるための走りは、勝つために必要なことなので、そこは運動量として減らしたくはない。逆に攻撃でも、無駄走りというか、味方がフリーになれるように相手を惑わす走りを、もっともっと増やしていきたいと思っています」

たしかに加藤の動きを見ていると、攻撃でも守備の場面でも、常に味方をサポートしようという狙いが見える。自身が目立つのではなく、チームを助けるために――。加藤の走りはまさに、“献身”によって成り立っているのである。
不思議なのは、これだけ走っているのにひょうひょうとした加藤のポーカーフェイスは、試合中にほとんど崩れることはない。もしかしたら、この男は本当に疲れを知らないのではないか。
「やっぱり疲れますよ(笑)。今日は守備だけに追われたわけではないですけど、1点を追いかける展開だったので、いつもよりも疲れましたね」
サッカーでは、華麗なテクニックや豪快なゴールに目が奪われがちだが、本当に尊敬されるべき選手は、“走れる選手”なのではないかと思う。草サッカーで5分ともたない自身の不甲斐なさを思えばなおさらだ。
この夏、加藤大の走りに注目してみてはいかがだろうか。