先日の今季開幕戦で先発フル出場した原輝綺に関する記事が、Yahoo!ニュースに掲載されていた。

高卒ルーキーが開幕戦デビュー…変わるJクラブ「就活市場」は実力主義へ

●あえてJ2選択する高校サッカー組

2月25日から幕を開けた今季の明治安田生命J1・J2リーグ戦。その舞台のスターティングメンバーとして、高校サッカー出身のルーキー3名が選ばれていた。市立船橋高校からアルビレックス新潟に進んだMF原輝綺、同じく市立船橋から湘南ベルマーレに進んだDF杉岡大暉、そして青森山田高校「10番」としての姿も記憶に新しい、ジェフユナイテッド千葉新加入のMF高橋壱晟である。

高校サッカー出身のルーキーが3人もJリーグの開幕戦に立つのは珍しい話ではある。大胆な若手起用に定評のある湘南・曺貴裁監督も試合後の記者会見で少し迷ったことを明かしていたが、蓋を開けてみれば堂々たるプレーぶりだった。

3人ともフル出場だったという事実が示唆するように、それぞれのプレーは十分に及第点。1万人近い観衆の声について「(高校サッカー)選手権を経験しているので」(杉岡)と言えてしまうのは、彼らの持っている1つの強みだが、それも選手としてのクオリティーが基準に達していた上でのことである。

もう1人、途中交代から開幕でピッチに立った高校サッカー出身ルーキーとして京都橘高校出身のFW岩崎悠人(京都サンガF.C.)もいる。きっちり1アシストを記録し、敗戦試合になってしまったとはいえ、こちらもルーキーのデビュー戦としては悪くない印象を残している。

ちなみに、同学年のJユース出身の“ルーキー”を見てみると、MF堂安律(ガンバ大阪)がJ1で交代出場、DF冨安健洋(アビスパ福岡)がJ2でフル出場だった(彼ら2人は昨季の段階でユースを“卒業”しているので、言葉の定義によってはルーキーではないかもしれない)。

絶対数が「多い」印象があるので、今年の高校サッカー組は「当たり」だったという見方もできる。ただ、ここで留意しておきたいのはJ2で3人がデビューして、J1では1人がスタメンだったということ。岩崎と杉岡はFC東京のような、予算規模の大きいメジャークラブからのオファーを受けながら、あえてJ2を選んだ選手たちだ。

岩崎はその理由をハッキリ「出場機会」と口にしていたが、現実を見据えながらの選択をした選手たちだ。高橋は千葉が非常に早い時期にオファーを出して囲い込もうとした選手だが、こちらも注目新人でよくある「ビッグクラブのオファー待ちで保留」のような選択をせず、素直に千葉を選択した。

そして原は逆に掘り出し物だった。急激に伸びていたタイミングで確かな眼力を持った新潟のスカウトが見いだしての一本釣りだったが、こちらもビッグクラブ待ちはせず。オファーのあった徳島ヴォルティスと新潟の双方に練習参加した上で決断を下した。

●選手の意識に影響する様々な事情

彼ら4人が仮に鹿島アントラーズや浦和レッズ、FC東京といった分厚い選手層を持つクラブに加入していたら、開幕戦で出場機会があったかは正直に言って微妙だろう。そうした選択が一概に間違いとは言えないが、「試合に出てナンボ」ということから高卒新人のブランド志向が少し変わってきた印象はある。

Jリーグ創設から25年が経過し、予算規模の大きなクラブのユースチームが軒並み強豪となって、世代のエリート選手を多く擁している影響もある(彼らの多くは昇格してもトップの選手層が厚いゆえに、出番がないという状況でもあるが……)。自前の良い選手がいれば高校サッカーの新人に手を出さないというのはある意味で当たり前の選択なので、逆に中堅以下のJクラブには高校サッカーの有望株を獲得できるチャンスが広がってきているという言い方もできる。

就職活動において「良い会社」への内定を良しとするようなノリで、「取りあえず大きなクラブへ」となっていた選手側(あるいは指導者)の意識も、「試合に出てナンボ」へと少し変わってきたという見方もある。高卒ルーキーが“即戦力”となるような、予算規模の小さいクラブは、そもそも専任のスカウトマンを予算的に確保できないという矛盾もあるのだが、そこへ積極的に“投資”するクラブが出てくると、さらに人の流れが変わっていく可能性もある。

個人的には欧州や南米がそうであるように、代理人が「高校・大学サッカーのタレント発掘」という視点でもう少し機能すれば、より良い雇用のマッチングが起きるのではないかとも思うのだが、こちらはまだまだ難しい面もありそうだ。

文=川端暁彦

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